研究概要 |
1.61年度,イーグルMEMに10%ウシ胎児血清, 10%ニワトリ胚抽出物に200u/mlのペニシリンG,1%寒天を加えた培地を用いて, 正常ヒト線維柱帯(TM)を, 12週に至るまで, TMの構造,構成要素に変化を起こさずに器官培養できた. また, 12週の間, TMの細胞数に変化はなかった. 2.62年度, 61年度に得た手法を用いて, TMに対する(1)金,鉄(2)コンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸,メチルセルローズ, の影響を検討し, 次の結果を得た. 金,鉄は, TMの細胞を活性化させ, 特に内皮網において, 基底膜様物質を含む細胞外要素の増加をもたらした. コンドロイチン硫酸, ヒアルロン酸も, 金,鉄とほぼ同様の結果を示した. メチルセルローズは, TMの細胞に殆ど影響を与えなかった. 3.63年度.61年度に得た手法を用いて, TMに対する(1)アルゴンレーザー照射, (2)各種抗緑内障点眼薬(ピロカルピン,エピネフリン, βーblocker(カルテオロール, チモロール, ベフノロール), )の影響を検討した. アルゴンレーザー照射は, TMに対して, 照射部の組織欠損と, 非照射部の細胞の減少, 空白部分の増加を惹起し, 培養5週に至るまで欠損部の修復は認められなかった. 抗緑内障点眼薬では, ピロカルピンは, TMの細胞のミトコンドリアの膨化を惹起し, エピネフリンは, TMの細胞の円形化, 層板からの離説を惹起し, βーblockarは, 一様に, 細胞内に特異な模様のライソゾームの蓄積を惹起した. また, コンドロイチン硫酸によって増加した細胞外要素は, ビタミンAを加えることによって減少するという事実を判明し, ビタミンAが今後, 抗緑内障薬として試用される可能性が示唆された.
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