研究分担者 |
深井 小久子 川崎医科大学, 眼科学教室, 病院主任視能訓練士
木村 久 川崎医科大学, 眼科学教室, 講師 (70169936)
川島 幸夫 川崎医科大学, 眼科学教室, 講師 (80177675)
田淵 昭雄 川崎医科大学, 眼科学教室, 助教授 (90122431)
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研究概要 |
聴性脳幹電位は約15年前より脳幹部の機能検査法として臨床に広く応用されている. しかるに視機能性の脳幹電位は私共の研究以前には微々たるもので, 臨床応用は全くなかった. この発達の遅れの原因は視覚性脳幹電位は網膜から4種類の速度の異なる反応が投射されることや, 瞳孔の対光反射を発生する脳幹電位も発生することなどから, 著しい複雑性が分析のさまたげとなっていた. 私共は動的脳電図法を基礎テクニックとして, 従来の波形による電気生理では検出できなかった視覚性脳幹電位を短潜時視覚誘発反応の中に確認した. すなわち光刺激後40msec時に出現する網膜律動様小波は陰性帯電として後方に投射し44msec頃脳幹部に到達し陰性電位の焦点を形成する. この反応は視神経から連続的に発生する. しかるに50msecにいたって脳幹電位の特徴である遠隔電場電位の帯電を示す陽性電位が脳幹部から湧くように出現する. 加算平均法ではこの反応は連続的にみえるが, 加算しない単一試行では3〜4回の脳幹部の発火を認め, 対光反射発動の神経核群の電位が示唆された. このP_<50>電位は瞳孔の対光反射の消失した脳幹部変性症の症例では欠損を示した. 今一つの視機能性脳幹電位には眼球運動準備電位がある. 各種の眼球運動中脳幹電位が正確に検出できるのは, 衝動性眼球運動に先行するスパイク陽性電位である. これは脳幹部の眼球運動神経核群のバーストニューロンの発火と考えられ, 衝動性眼球運動発動前8msecにはじまり, 運動中も5msecずれこむ. 単一試行ではこの14msecの間に5回の短発射を認める. 外転神経核出血をCTで認める外転神経麻痺の症例ではこれに相応する脳幹性スパイク陽性電位の欠損が明瞭に検出された. 本研究により, 従来研究が停滞していた視機能性(感覚と運動)脳幹電位の臨床応用が確立された. 本研究は日本を代表する独創的研究とすることができる.
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