研究概要 |
実験1.直径0.15μmの700℃3時間焼成の合成ハイドロキシアパタイトセラミックス(700℃HAP)と径0.65〜30μmの1,050℃4時間焼成の合成ハイドロキシアパタイトセラミックス(1,050℃HAP)各粒子の2種類の微細粒子を雄ウイスター系ラットの腹部皮下に注入し、1カ月の経過の中で粒子と生体組織の係わりを、電子顕微鏡的に検討を加えた。所見:a.700℃HAP粒子:初期(3日)にマクロファージ(Mφ)がHAP粒子の周囲に集合し、粒子に接した部位でMφの細胞膜が消失。後に(7日)多核巨細胞(MGC)内に粒子が存在。Mφは粒子を貪食したり、粒子塊の間に侵入したりしている。b.1050℃HAP粒子:径0.65〜5μmの粒子はMφに貪食された。その細胞質は、貪食により膨大している。径がさらに大きい粒子は貪食されず、その粒子にMφが集っている。MGCも出現し、小粒子は見当らないが、やゝ大きい粒子が貪食されている。しかし、径日的にMGC内の粒子が小さくなっている。c.MGCの出現はMφより遅い。また両者とも細胞表面に多数の細い細胞質突起がみられた。d.MGCがHAP粒子に接する面には、brush border様の構造物は観察されなかった。結論:a.2種類の粒子に対する生体反応の差は、焼成温度の差による粒子の性質、すなわち結晶性等の差に由来すると考えられる。b.MGCは、破骨細胞とは形態学的には異なる。c.MGCとMφの細胞表面構造の類似と、MGCの出現がMφより遅いことは、MφからMGCへの移行考えられる。 実験2.上記実験を再度行い、光学顕微鏡レベルでの酸フォスファターゼ反応を含めた各種染色での検討と、透過型電子顕微鏡によるルテニウムレッド,ペルオキシダーゼ反応でMφの態度,MGCへの移行,貪食不可能な大きさの粒子に接するMφらの態度などを追求中である。
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