研究概要 |
実験1, 700℃3時間焼成の直径0.15μmの合成ハイドロキシアパタイトセラミック(700℃HAP)と,1,050℃4時間焼成の直径0.65〜30μmの合成ハイドロキシアパタイトセラミック微粒子(1,050℃HAP)を, 雄ウィスター系ラットの腹部皮下にそれぞれ注入し, 注入後, 6時間, 1,3,7,14,21,28日経過後, 局所の組織反応を光学顕微鏡的に検索した. 実験期間中に局所の肉眼的病変および全身状態に異常は認められなかった. 結果:1)直径が7μm以下の微粒子は注入後1日から28日までの期間, マクロファージによってすべて貧食されていた. 2)それらの微粒子でも, 多数が凝集して細胞が侵入できない所では, 多核巨細胞が出現してそれらを取り込んでいた. 3)その多核巨細胞は, 結晶化の低い700℃HAPに対する細胞の方が,核数が多かった. 4)一般的に直径が7μm以上の微粒子に対しては, 注入後3日から多核巨細胞が貧食をしていた. 早期には, その微粒子をマクロファージが多数で取囲んでいたので,その細胞癒合の結果多核巨細胞になるものと考えた. 5)マクロファージや多核巨細胞に貧食された微粒子あるいは微粒子塊はしだいに消化され,実験後期(21日後,28日後)には小さくなったり, 崩壊していた. 実験2, 実験1と同じ施術したものを透過電子顕微鏡によって検索した. なお, 標本作製に当っては, 硬質のHAPを薄切する困難さから, 非脱灰および脱灰標本を併用して検索した. 1)700℃HAPは生体組織液にわずかに溶解し, 再沈着をして, それに接する細胞膜を不明瞭にしていた. 2)集合した多数のマクロファージは,血液単球由来のものが細胞分裂も含みながら成熟したものと考えた. 3)マクロファージが異物巨細胞に移行する前に, 互に細胞膜を密着させていた. 4)28日までの経過では, 骨形成や石灰化物の沈着は認められず, ハイドロキシアパタイトの骨誘導能は認められなかった. 5)本多核巨細胞の表面に刷子縁などは認められず破骨細胞とは異ると考えられた.
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