研究課題
一般研究(B)
最近の歯科の治療分野におけるインプラント学の進歩は目ざましく、各種インプラント材が市販され臨床に供されていて、また組織適合性をみる実験も多くなされている。しかし、ホスト側の基本的な異物認識のメカニズムに関しては不十分であった。当研究は細胞と同じくらいの大きさに調整したインプラント材をラット腹部皮下に注入し経時的に病理細胞学的にホストと生体材料の関係を明らかにしたものである。使用した生体材料は0.15μmから30μmの合成ハイドロキシアパタイトセラミック微粒子で水に不溶で化学反応を起こさないすなわち抗原性を持たない異物と考えられる。その結果注入後の急性炎症は速やかに消退しマクロファージ、多核巨細胞および少数の線維芽細胞からなる非特異的異物肉芽腫を形成した。一般的に、直径が7μmに満たない微粒子は注入後、マクロファージによってすべて貪食されていた。また、直径が7μm以上の微粒子または微粒子塊に対しては、注入後3日から28日までの期間、多核巨細胞が出現してそれらを貪食していた。このことはマクロファージが単独で貪食できない大きさの微粒子を、複数のマクロファージが取り囲み、融合の結果多核巨細胞となり、その細胞内に取込むことを示した。また、マクロファージは血液由来の単球が血管から出て細胞分裂し、成熟マクロファージに分化することが示された。マクロファージ、多核巨細胞の微粒子の認識・貪食過程で重要な役割を果たしていることが考えられた。以上の結果から、従来の諸材料には見られない高い組織親和性を示すといわれているアパタイトセラミックといえども、生体細胞は異物処理反応を生じることが明らかにされた。また、このことは、アパタイトセラミックにより作られた人工歯根や人工骨を臨床に使用した場合、その予後について注意を喚起するものである。
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