研究概要 |
Na^+ポンプの阻害物質の精製をウサギ骨格筋の熱抽出物を出発としてDowex(AG50W×4)カチオン交換カラムクロマトグラフイーのくりかえしと,Sephadex Gー20ゲルロ過カラムによッて行なった結果,約比活性を200倍に増加させる事が出来た. 本物質の阻害機構を明らかにする手段として前年度に続きポンプの示す立体構造変化の研究を行った. Na^+ポンプのα鎖のCyoー964に結合した, BIPM残基はoligomoycin又はMgATPによって生じるNa^+の閉塞状態に伴って微少環境を動的に変化させる事が示された. これらの結果その他はNa^+の閉塞からNa^+の遊離又K^+の閉塞の両ステップでBIPM残基が他の部分反応に比し最大のケイ光強度増加と最大の減少をもたらす事を示していた. さらに他の部位での変化の有無を調べる目的でBIPM修飾後Nー(7ーdimethylaminoー4ーcoumarinyl)phemyl)maleimide(DACM),5ーiodoacetamide fluorescein(1AF)又はFluoresceinー5ーisothiocyanate(FITC)で2重修飾後,Na^+ポンプ反応中間体形成に伴う,それぞれのケイ光強度を追跡した. その結果はすでに発表したBIPM残基のケイ光強度測定の結果を裏付けるのみならず,FITC,IAF,DACM及びトリプトファン残基がNa^+閉塞からNa^+遊離及びK^+閉塞からK^+遊離とNa^+閉塞に伴って他の部分反応に比し最大のケイ光強度の増加又は減少をもたらす事を示している. しかしNa^+に導入したケイ光性残基の全てがこれら中間体形成に伴ってそれら微少環境を変化させているわけではない事も同時に示された. これらの結果はNa^+ポンプ分子の種々の部位でNa^+とK^+の輸送に伴い動的部位と静的部位の相互交換が行われている事を示している.
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