新型起炎症性生体内因子(PAF)による歯髄の炎症感受性亢進作用に関する研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61480382
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 三条 大助 東北大学, 歯学部, 教授 (70013943)
• 研究分担者: 平藤 雅彦 東北大学, 歯学部, 助手 (20142987)
• キーワード: 血小板活性因子 / PAF / 血小板凝集 / 肺抵抗 / 抗ヒスタミン薬 / 微小循環 / 歯髄の炎症

研究概要

3年間にわたる研究の総括をかね、本年度実施された研究の実績は、次の如くである。1.炎症時の微小血管動態を探る病態モデルとして、われわれが開発した硫酸セルロース静注法によるラット全身リンパ腺うっ血症を作製して、PAFとの関係を検索した。PAFには、硫酸セルロースのような作用はないが、PAF前処置によってうっ血症は増悪した。このことはPAFが炎症による微小循環動態の障害の素地をつるるものとして示唆されよう。2.PAFによる微小循環系の障害において、動脈側あるいは静脈側のいずれが障害をうけるかを検した。方法として局所麻酔薬を皮内注射し、局所の鎮痛作用消失時間をもって、薬物吸収の目安とし、薬物の静脈側からの吸収の示標とした。局麻薬の鎮痛持続時間は、PAFを併用した場合に短縮するが、PAFの全身投与では影響しない。このことはPAFの作用が局所性であり、静脈拡張、動脈収縮という特徴的な作用を発揮することの機序を明らかにした。3.PAFの抗クラーレ作用は、横隔膜神経筋標本では認められなかったが、さきに報告したin vivo標本では認められる故、まさに血管を介してのPAFの作用であることがより明確にされた。4.肺抵抗実験において、PAFは気管平滑筋を収縮させて、肺抵抗を増大する。そしてこれには抗PAF薬が拮抗する。このことからPAF受容体の存在が指摘されている。しかしわれわれは、抗ヒスタミン薬をはじめとする2、3の抗アレルギー薬にも抗PAF作用のあることを見出した。このことはPAFの作用に直接受容体を介する作用のほかに、他の炎症メジエーターを介する間接作用のあることを示唆する。またB_1関連化合物のなかにも抗PAF作用を示すものがあることが見出された。しかしこれらの抗PAF薬は、PAFの血小板凝集能には影響しない。それ故、PAF受容体を介さない別のPAF拮抗機序により成立するものと判断される。

研究成果

• [文献書誌] Hirafuji,M.;Ogura,Y: Europ.J.Pharmacol.Submitted (1989)
• [文献書誌] Hirafuji,M.;Ogura,Y: Europ.J.Pharmacol.Submittrd (1989)
• [文献書誌] Hirafuji,M.;Maeyama,K.;Watanabe.T.;0gura,Y.: Biochem.Biophys.Res.Commun.154(3). 910-917 (1988)
• [文献書誌] Hirafuji,M.;Ogura,Y: Archs Oral Biol.35. 311-315 (1988)
• [文献書誌] 平藤雅彦,前山一隆,渡邉建彦,小倉保己: Japan.J.Pharmacol.46(Suppl.). 183 (1988)
• [文献書誌] 平藤雅彦,小倉保己: Japan.J.Pharmacol.46(Suppl).275 (1988)
• [文献書誌] Hirafuji,M.;Ogura,Y: "Biosynthesis by and action on vascular endothelial cells of Platelet-activating factor(PAF-acether):Its role in vascular diseases,In Trends in Pharmacological Research on Platelet" Ishiyaku Euro-America Inc.,Tokyo, 1-10 (1988)
• [文献書誌] Hirafuji,M.;Ogura,Y: "Prostaglandins and leukotrienes in dental pulp:Thir possible roles in pulp pathophysiology,In:Dynamic Aspects of the Dental Pulp,Edit.by R.Inoki,T.Kudo and L.Olgart, in press" Ellis Horwood Ltd.,Chichester, (1989)