研究概要 |
α-クロラローゼで麻酔した成熟ネコで, 三叉神経脊髄路核吻側亜核ニューロンから細胞内記録を行い, 末梢電気ならびに自然刺激および大脳皮質電気刺激のシナプス後作用を検索して以下の知見を得た. 吻側亜核の二次ニューロンには末梢刺激によって興奮性応答に引き続いてIPSPが誘発されるニューロン(TypeIニューロン)と, 興奮性応答のみを示すニューロン(TypeIIニューロン)とが存在し, いずれのニューロンも低閾値機械受容ニューロンと判定された. 2.吻側亜核から対側視床後内腹側核へ投射するニューロンはいずれもTypeIニューロンであった. 3.吻側亜核から同側視床後内腹側核へ投射するニューロンは存在しなかった. 4.IPSPを誘発する抑制性受容野は興奮性受容野を取り囲むように存在し, この領域からIPSPを誘発する刺激の種類と, 興奮性受容野からスパンクを誘発する刺激の種類とは一致した. 5.IPSPは, 興奮性受容野の刺激に対してもスパンク応答に引き続いて誘発された. 6.TypeIニューロンのスパンク発射頻度は機械刺激の速度と, TypeIIニューロンのそれは刺激の大きさと相関関係を示す傾向が認められた. 7.TypeIニューロンの約半数では大脳皮質第一次体性感覚野の刺激によってもIPSPが誘発され, このIPSPを誘発する領域は第一次体性感覚野の顔面領域に限局していた. 8.末梢性および中枢性に誘発されるIPSPの潜時, 持続時間は既に報告されているprimary afferent depolarization(PAD)のそれと比べて短かった. 以上のことから, 末梢性に誘発されるIPSPはニューロンの受容野を決定するための側方抑制あるいは周辺抑制に関与していることが推察される. そして末梢性および中枢性の抑制性シナプス後作用はいずれも, 抑制性修飾作用の初期相に大きな役割を果していると考えられる. また, TypeIニューロン, TypeIIニューロンがそれぞれ異なった感覚情報の伝達に関与していることが推察される.
|