研究概要 |
ウサギ肋軟骨細胞のDNA合成とプロテオグリカン合成をともに促進するソマトメジン様ペプチドをウシ胎仔軟骨より精製し, これを軟骨由来因子(CDF)と命名した. また, ウシ胎仔軟骨には中性で11Kおよび塩基性で16Kや, プロテオグリカン合成促進活性のみを持つ26KCDFなど数種の分子種が存在することが分かった. CDFの作用機構を検討した結果, そのDNA合成促進作用は軟骨細胞のG1期初期に作用すること, また, CDFとEGFを共存させるとDNA合成が相乗的に促進されるが, この際, まずCDFが軟骨細胞のG1期初期に作用するとEGFなどの非ソマトメジン因子などの増殖刺激に対応しうるようたに活性化されることが分かった. 軟骨細胞にホスホチロシンホスファターゼの阻害剤であるvanadate(0.6-60μM)を添加するとチロシンリン酸化レベルが1.5-31倍に上昇した. また, 0.6-6μMでは軟骨型プロテオグリカン合成が亢進した. しかし20-60μMでは反ってプロテオグリカン合成が抑制され, 悪性形質転換が起こった. したがって軟骨細胞の分化機能の発現および形質転換にはチロシンリン酸化が関与していることが分かった. ウサギ肋軟骨より成長軟骨細胞を分離して高密度で浮遊培養を行うと, まずDNA合成が亢進し, 次いでプロテオグリカン合成, II型コラーゲン合成の亢進を経てアルカリフォスファターゼ活性, X型コラーゲン合成および活性型ビタミンD_3受容体レベルの上昇を来し, 遂いには軟骨内石灰化が発現しIn vivoにおける軟骨細胞の分化の過程を再現することに成功した. この系にFGFを添加して2ヶ月間培養を続けたところ, 軟骨型プロテオグリカン産生を伴う軟骨様組織の形成が起こったが, アルカリフォスファターゼ活性の上昇や初期石灰化は反って抑制された. 今後は, この系を歯胚の培養に応用してその分化の過程を追求したい.
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