研究概要 |
近年、増殖因子レセプターが著しく変動している例が、癌化した細胞で数多く報告されている。とりわけ上皮癌の場合の細胞の癌化には、EGF(上皮性細胞増殖因子)レセプターの異常増加が密接に関連していることが強く示唆されている。このEGFレセプター量の変動を数値化した定量的な解析を進展させ、口腔内上皮癌の同定および早期発見に役立てるため、61年度においては、組織におけるEGFレセプターの定量的基礎実験を行った。 1.EGFレセプターを、2-30×【10^5】/細胞の範囲でそれぞれ異にする5種のA431変異株と、ヒト正常線維芽細胞(EGFレセプター,約5×【10^4】/細胞)につき、マイクロプレートおよびEGFレセプターに対するモノクロナール抗体を用いたアビジン-ビオチン法の適用を検討した。一定条件下での増巾発色をプレートリーダーで読みとった値とレセプター量間の標準検量線を設定した。 2.上記のin vitro系で得た検量線を基準としたin situ系での定量を、臨床検査にも応用可能なものとすべく、混量100mgの組織片に適用出来、かつ簡便性と迅速性に留意した検定方式を確立した。その方式によればBiopsyによる100mg試料の100検体についての検体が1〜2日で可能である。この検定方式によるケースとして、A431細胞をヌードマウス背部に皮下注射して得られたA431腫瘍組織については、約1.5×【10^6】EGFレセプター/細胞(ただし組織片中の細胞数は、DNAの定量値より推定)という検定値が得られた。 今後は、口腔内上皮癌など、腫瘍組織検体について、EGFレセプター数の増加の度合と、腫瘍の悪性度、転移度などとの関連を系統的に検討する計画である。
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