研究概要 |
B.gingivalis381(B.g)株染色体DNA【Sau^3】A切断断片のλL47.1ファージベクターによる遺伝子バンクを作成し、B.g菌体から分離した細胞表層抗原に対する抗血清と免疫学的に反応するクローンをスクリーニングした。その中からλMDBGIを選び、ファージDNAを抽出精製し、プラスミドベクターpACYC184にサブクローン化した。サブクローンMD109のcell free extractsからクローン蛋白質を精製し、ウサギに免疫して抗血清を作成した。クローン蛋白質は分子量27Kdalの疎水性の高い蛋白質で、他のBacteroides細胞表層抗原で免疫して得た抗血清とは反応せず、B.gに対して良く反応した。また、抗27Kクローン蛋白質抗体は可溶したB.g細胞表層抗原分画とは反応したが、他のBacteroidesとは反応しない。さらに、PMD109クローンDNAを【^(32)P】標識したプローグを用いて、種のBacteroides染色体DNAとSoutharn gel DNA-DNA hybridizationを行ったところ、B.gの染色体DNAとのみ反応した。以上の結果から、クローン蛋白質はB.gに特異的な抗原蛋白質であることが判明した。次に、B.g菌体から莢膜分画を調製しウサギに免疫し抗血清を作成し、27K蛋白質と反応するかを調べたところ、良く反応することから、このクローン蛋白質を莢膜蛋白質であると推定した。さらに、正常人,歯肉炎,軽度,中等度,重度歯肉炎患者から血清を採取し、27K蛋白質に対する抗体価をWestern-Blot ELISA法により分析を試みた。その結果、歯肉炎でわずかに、軽度でもっとも高い抗体価を示し、中等度,重度ではむしろ低いことが判明した。このことから、27K莢膜蛋白質に対し、免疫応答の高いヒトはB.gの感染に抵抗して軽度のまま経過する可能性もあると考えられた。 以上のことから、27K蛋白質はB.gの感染に対する免疫学的診断、および、歯周病ワクチンの材料として有用であることが示唆される。
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