研究概要 |
口腔諸器官の発達に影響する唾液および唾液腺中の"生理活性物質"の存在を確めるため, 我々は以下の実験を行った. 1.唾液腺中の"成長因子"について 幼若時に顎下腺を摘出したラットでは, 雌雄とも6週齢以後の体重値が無処理対照動物に較べ減少することが認められた. また,顎下腺摘出動物の精巣比体重値は対照動物のそれよりも低い傾向にあった. 一方,舌下腺摘出動物ではこれまでのところ顎下腺摘出動物でみられるような体重値の減少は認められなかった. 現在, 顎下腺摘出動物の飼料摂取量,飲水量について検討中である. 2.唾液腺中の"味覚修飾因子"について 舌下腺摘出ラットは無処理ラットに較べ,高張食塩水に対する味覚拒否閾値が有意に低下していた. 舌下腺摘出ラットの鼓索神経応答を調べると,Na^+ー輸送ブロッカーのアミロライドによる高張食塩応答の抑制効果が無処理ラットに較べ増大していることが分った. この結果から,舌下腺由来の物質が無処理ラットではアミロライド感受性受容メカニズムの発達に抑制的に働き,舌下腺摘出ラットではその欠損により食塩拒否閾値の低下がもたらされるものと示唆された. 3.顎下腺におけるアンドロジェン代謝について 顎下腺支配副交感神経を片側のみ切断した場合,切断側顎下腺のアンドロジェンに対する応答は腺重量およびプロテアーゼ活性を指標とした時,対照側よりも高まっていることが分った. また,アンドロジェン処理された切断側顎下腺のアンドロジェン代謝も対照側に較べ亢進していた. 顎下腺支配副交感神経切断により誘導される腺萎縮等の変化はアセチルコリン連続投与により軽減されることはなかった. これらの結果,支配神経切断によりもたらされる顎下腺での一連の変化にはアセチルコリン以外の因子が関与している可能性が考えられる.
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