研究概要 |
う蝕はstreptococcus mutansにより惹起される感染症である。その病因論の解明には本菌種のもつビルレンス因子や他の菌種との相互作用を明らかにする必要がある。本年度の研究によりえられた結果の主なものとしては、 1.日本人小児活動性う蝕から多数のS,mutans、およびS,sanguisを分離した。これらのうちMT6801株はフルクタン産生能が著しく昂進したvariantであることが示され、一方MT3791株は菌体外に強いバクテリオシン(mutacin)を産生することが明らかにされた。免疫学的には、前者が血清型Cに、後者がgに属することがゲル内沈反応により確かめられた。 2.上記2株にはプラスミドが存在しないことが確認された。 3.MT6801株をくり返しニトロソグアニジン処理することによって、フルクタン産生能を失いダルカン産生能を維持しているNG14株と、両者の合成能を実質的に喪矢したNG7183株を得た。典型的なC型薗MT8148株と比較すると、MT6801株のう蝕原性はやや低下し、NG14株のそれはほぼ同程度であるのに対し、NG7183株は全面的に同活性を次いた。 4.S.sagguisの多くの臨床分離株はIgAプロテアーゼを産生する。このうちST3株を被験菌とし、本菌DNAのSau3A断片のベクター(pBR322をBamH1、CPI処理等を行ったもの)への取り込み実験を行ったが、現時点では成功していない。 5.前項の実験、あるいはS.mutansのDNAの調製にさいしてはE.coli等で一般に用いられているリゾチーム法が不適当であり、新たにM1エンドN-アセチルムラミターゼの使用がきわめて効果的であることを見出した。
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