研究概要 |
S.mutansの菌体表層タンパク抗原PAcは,同菌の歯面への付着因子の1つとして注目されている. 本年度は,このPAcタンパクを支配するS.mutansの遺伝子のE.coli K12株にクローニングすることを試みた. 1.S.mutans MT8148株の染色体DNAを制限酵素PstIで完全消化し,数千個のPstIライブラリーから,6個の抗PAc血清反応陽性クローンが得られた. これらはいずれも3.8kb断片であった. 2.SDSーPAGE後,ウェスタンブロッティグを行うと,上記断片のうちpPC12と命名したものが産生するタンパク抗原の分子量は約9.5万であり,これはPAcの約半分の分子サイズであった. pPC12の制限酵素切断サイトを利用した欠失変異体の解析から,3.8kbのPst断片上にPAc抗原のN末端側がのっていると推定された. 3.それ故,残りのC末端側を支配していると思われる遺伝子をコロニーハイブリダイゼーションでスクリーニングし,4.2kbのSac工断片を得た. この断片とはじめの3.8kb PstI断片を結合させ,完全なPAc抗原を支配する遺伝子を再構成することができた(pPC41). 4.pPC41の産生タンパク抗原はSDSーPAGE上での分子量は約19〜20万で,S.mutans由来の天然PAc抗原よりもわずかに大きかった. ゲル内免疫拡散法では,pPCの産生タンパクは精製した天然型のPAc抗原と融合する沈降線を形成した. 一方, pPC12の産生タンパクは明確な沈降線を形成しなかった.
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