研究概要 |
今年度の研究実施計画に基づき、象牙質の知覚伝達経路として重要な位置を占める象牙細管の内部に存在する管状膜様構造物について、微細形態学的観察を行うとともに当核組織より非コラーゲン性蛋白質の分離、精製を行い下記の知見・成果を得た。 1.管状膜様構造の微細形態学的観察ヒト新鮮抜去歯牙を用いて冷却下でエナメル質を除去したのち、得られた象牙質片を用いて6N-塩酸にて60℃、30分間象牙質表層部の脱灰処理を行った。洗浄後直ちに試料を通法に従って固定、脱水し、臨界点乾燥の後、走査型電子顕微鏡による観察に供した。その結果、脱灰された象牙質表層部では固有の細管構造や管間基質が消失し、有機性の管状膜様構造物の存在が明らかとなった。また、当核構造物を集めて蛋白質の分離・精製を行うための試料を調整することができた。 2.管状膜様構造物を用いた非コラーゲン性蛋白質の分離・精製上記方法により調整された管状膜様構造物より4M塩酸グアニジンを用いて蛋白質を抽出し、DEAEカラムクロマトグラフィー ゲル瀘過クロマトグラフィーを行い、得られた各画分を用いて蛋白質,リン,【Ca^(2+)】および【Mg^(2+)】の定量、さらにアミノ酸分析を行った。一部の試料はSDS-PAGEに供した。 その結果、4μ塩酸グアニジン抽出液中には分子量が67K,58K,25Kおよび12Kダルトンの非コラーゲン性蛋白質が存在していた。とくに25Kダルトンのものはリンを最も高濃度に含有し、【Ca^(2+)】および【Mg^(2+)】も多く結合していた。アミノ酸分析の結果、この25Kダルトンの蛋白質はホスホオリンではなくオステオネクチン様蛋白質であると考えられた。
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