研究概要 |
今年度の研究実施計画に基づき, ヒト象牙質粉末を用いて非コラーゲン性リン含有蛋白質であるオステオネクチンを分離精製し, 平衡透析法を用いてカルシウム結合能の検討を行うことと, 象牙質知覚過敏症の歯牙より知覚過敏部象牙質の試料を生検により採取し, 当該部象牙質の微細形態学的検索を行うことを実施し, 以下の知見, 成果を得た. 1.非コラーゲン性蛋白質のカルシウム結合能についての検討 ヒト新鮮抜去歯牙より粒度60〜150meshの象牙質粉末を調整し, 0.6N塩酸に24℃, 4日間撹拌抽出操作を加えたのち得られた沈査よりグアニジン可溶性蛋白質を得た. この蛋白質を用いてDEAEカラムクロマトグラフィーおよびゲル瀘過クロマトグラフィーを行い, 前年度に管状膜様構造物から得た蛋白質と同様のオステオネクチン様蛋白質の画分を得た. 今年度は当該画分をさらに高速液体クロマトグラフィーを用いて分離精製し, ヒト象牙質より初めて分子量22Kダルトンのオステオネクチンを得ることができた. 次いでオステオネクチンの結合カルシウムを分離除去したのち, 平衡透析法にて^<45>Caを用いて結分能を調べた結果, オステオネクチンがカルシウム結合能を有する結果が得られた. 2.象牙質知覚過敏症の歯の露出象牙質の微細形態学的検索 知覚過敏部象牙質より0.8mmφの生検試料を得, SEM,TEMを用いて当該部の微細形態学的観察を行った. その結果, 知覚過敏部では象牙細管が開放され, 細管内有機性構造も崩壊しており, 外来刺激の伝達を遮断する構造は認められなかった. 一方, 同一象牙質面の非知覚過敏部では細管内壁の有機性膜様構造に沿って結晶の沈着が認められ, 管腔は菱形の結晶で封鎖されていた. このことは管状膜様構造物が石灰化に関与することを示唆するものと考える.
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