研究概要 |
先年度の研究によりActinomyces viscosusの動物への定着させるための条件が解明されたので, 動物へのヒト歯周ポケット常在菌であるActinomyces viscosus T_<14>V株(AV)およびBacteroides gingivalis 381株(BG)のストレプトマイシン耐性菌を作製するため, 培地中のストレプトマイシン濃度を漸次増加させ継代培養し耐性菌を得た. この耐性菌を予めペニシリンを投与してあったラットの口腔内に接種した. 21日目よりラット口腔内に接種した細胞が常在するのを確認した. 細胞の接種開始後42日目に肉眼的に軽度の歯周炎症の発症が見られた. 細胞の動物への接種を始めた時期に抗AV, 抗BG抗体を作成すくために家兎にAV, BGを接種し, 抗AV, 抗BG血清を得た. 動物に細菌の接種を開始してから42日目に動物を屠殺し組織学的な検索を行った. HE染色標本では細菌の接種を行わなかった対照群において歯肉炎症, 歯周組織崩壊は見られなかったが, 実験群では歯肉炎症, 歯周組織崩壊, 極く軽度の歯槽骨吸収が見られた. 接種した細菌の組織浸入を調べるため薄切した標本に抗AVあるいは抗BG家兎血清を作用させ, 次いでFITC標識抗家兎IgG特異ヤギ抗体を作用させ蛍光染色を行い, 蛍光顕微鏡下で観察した. 対照群においては組織内への細菌浸入は認められなかった. 実験群においてAVは接合上皮内に浸入しているのが認められたが結合組織内には見られなかった. BGは口腔上皮と接合上皮とが接合してい部位に多数浸入しているのが認められたが結合組織内には認められなかった. 歯槽骨の吸収を含めた歯周組織の崩壊は細菌が組織内に浸入した後に起こるという仮設が提唱されていたが, 本研究の結果からは細菌の組織浸入が直接歯周組織の崩壊を惹起するという所見は認められなかった.
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