研究概要 |
ヒト下顎運動系の被調節性質を知るため、定頻度反復クリック音司令信号負荷時と下顎偏心位での持続咬みしめを負荷時の下顎tapping運動を観察し、以下の結果を第75回および第76回日本補綴歯科学会等で発表した。 1.1.3Hzの音司令信号を10被検者に負荷し、信号と歯牙咬合接触が一致するよう下顎tapping運動を調節させたときの下顎運動曲線の分析結果 (1)信号負荷および無拘束tapping時の開口量はそれぞれ9.4mmおよび11.9mmで信号負荷時に開口量が減少することが分かった(P≒0.01)。 (2)咬合接触相持続時間がtapping運動の一周期当りに占める比率は、tapping試行回数の増加により信号負荷時には減少(初期53.4%、未期49.6%)したのに対し、無拘束時には増大(初期50.6%、未期53.4%)し、両者の経時的変化に有意差が認められた(P≒0.0002)。 2.0.3,0.8,1.3,1.8,2.3,2.8Hzの定頻度信号を10被検者に負荷したときの咬筋筋電図の分析結果 (1)0.3Hzの信号負荷時、EMG burstの立ち上りと咬合接触時点は信号よりそれぞれ役40msecおよび119msec遅れたが、他の頻度の信号負荷時にはburst立ち上りは信号に先行し咬合接触時点は信号とほぼ一致した(P<0.05) (2)歯牙接触時間および咬筋EMGのDOSPは0.3Hzの信号では負荷回数20回まで負荷回数増加とともに短縮したが、他の信号負荷時にはほとんど変化しなかった(P<0.0005)。 3.下顎偏心位で30秒間の最大隨意咬みしめをさせた後のtapping pointは試行2〜3回まで偏心側に偏位し、前方および側方位での条件づけ効果は後方位での条件づけ効果より大きいことが分かった。 4.以上の結果は下顎の被調節性質に依るもので、次年度にその詳細をさらにくわしく詳細に検討する予定である。
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