研究課題
今年度は本研究の最終年度として、適切な切除範囲を決定するための臨床的・X線学的指標の確立を目的とした。1.X線所見と摘出標本所見との比較では、X線像を骨吸収辺縁が境界明瞭なerosive型と虫喰い状を示すmoth-eaten型に分類すると、erosive型はX線上の骨吸収範囲と病理組織学的な腫瘍浸潤範囲が一致するものが多く、moth-eaten型は必ずしも一致していなかった。erossive型ではX線所見より腫瘍の浸潤範囲を予測することは可能であり、moth-eaten型で困難であった。2.試験切除標本と摘出標本所見との比較では、試験切除標本における腫瘍の分化度ならびに増殖浸潤様式は摘出標本深部の腫瘍と骨の関係に密接に関連していた。圧迫性の増殖浸潤様式を示す腫瘍は、腫瘍が表在性に存在し腫瘍と骨面の間には一層の線維性組織が介在する表在型や腫瘍がほぼ一塊として増殖し吸収された骨面の間には一層の線維性組織が介在する境界明瞭型が多く、一方、低分化型のもの、浸潤性の増殖浸潤様式を示すものは、腫瘍が虫喰い状骨吸収面をしめす骨内に浸潤性に増殖している境界不明瞭型が多くみられた。後者においては広範囲切除が必要であった。以上、X線所見および試験切除標本を詳細に検討することにより、多くの症例において腫瘍の浸潤範囲を予測することは可能であり、これらの所見は適切な切除範囲を決定するための重要な指標ととなりうると思われた。