研究概要 |
介在部導管筋上皮細胞のmicrofilamentの配列走行の把握ならびに終末部筋上皮細胞の発生分化過程における形態変化を解明することを目的として, 成熟ラットの三大唾液腺および生後発生の過程にあるラット舌下腺を, actinと特異的に結合するとされているnitrobenzoxadiazole(NBD)-phallacidinを用いて蛍光顕微鏡下に観察した. この方法により介在部導管筋上皮細胞のactin filamentは, いずれの腺においても導管の長軸と平行に配列されることが明確に示された. 舌下腺筋上皮細胞の形態分化については, 出生直後は腺終末部の辺縁に微弱な瀰漫性の蛍光反応を呈する扁平な細胞として現われ, 生後3日には蛍光陽性部が線維状構造の上に集束化を開始し, 生後10日目には筋上皮細胞特有の星形を呈するものが増加し, 生後30日にはほんとどの筋上皮細胞が, ほぼ成熟した形態を呈することが立体構造レべルで明らかとなった. 唾液腺腫瘍のマーカーを開発する目的で, 表皮細胞よりMatolyの方法に準じ11種類のサイトケラチン単クローン抗体の作製に成功した. 本抗体を用いPAP法により正常唾液腺の組織染色を行った結果, 2種類の単クローン抗体はそれぞれ唾液腺導管上皮基底細胞のみを識別し, 他の単クローン抗体は導管上皮基底細胞および筋上皮細胞を認識することが解った. これら二種類の抗体を組合せることにより, 唾液腺腫瘍の発生由来や, 更には細胞内のケラチン分布を知る上で有用なマーカーとなり得る可能性を示した.
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