研究概要 |
市販の乾燥大豆をコーヒーミルで粉砕し、60メッシュ以下のものを集め、10mM Tyis-HCL buffer、pH7.4に2%になるようにした。Polter Elvehjemでホモジナイズ後、ナイロンクロスで濾過し、濾液を10,000xg,15min遠沈した上清を大豆抽出液とした。Bacteroides gingivalis由来のSH依存性コラゲナーゼは、菌の培養上清を冷アセトンによる分画(2倍容の冷アセトンを添加)、Sepharose CL-6Bによるゲル濾過、超遠心(100,000xg,60min)による沈査を0.8%N-オクチルグルコシドで可溶化すること等により約70倍の活性上昇をみたものを用いた。大豆抽出液は0.45μmのフィルターで濾過後、ウルトロクロムGTi生体分離システムにより、TSK DEAE-5PWカラムにより吸着クロマトグラフィーを行うと、明瞭な七つのタンパクピークに分離した。この中で、約0.3M Nacl相当部分にSTI(ソイビーン・トリプシン・インヒビター)活性がなく、コラゲナーゼ活性を阻害するピーク(P-【VII】)を認めた。この画分を集め、さらにTSK G3000SWカラムによるHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を行ったところ、コラゲナーゼ阻害物質はほぼ排除画分に溶出され、分子量は約60〜70万ダルトン以上と推定された。現在、さらに正確な分子量を推定するため、高分子の分画に用いられるTSK G4000SWによるHPLCを行う準備をしている。 以上の結果から、大豆中には、STIとは全く異なる、かなり高分子のバクテロイデス・ジンジバリス由来のコラゲナーゼを阻害するタンパクが存在することが明確になり、本物質は自然食品中に存在することから毒性等の心配もなく、しかも熱に安定であるため、食品加工により変性しない等の特徴があり、将来、歯周病の予防あるいは治療に応用できる可能性が示唆された。今後は、本物質の構造解析を進め、阻害メカニズム等について研究を進めたい。
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