研究概要 |
前年度の報告においてBacteroides gingivalis 381より抽出したSH依存性のコラゲナーゼ活性を阻害する物質が, 市販の大豆抽出物中に含まれ, 分子量のかなり大きな物質であることをウルトロクロムGTiー生体分離システムにより確認した. 本年度は本物質の性質をさらに詳細にしらべるため, より広範囲の分子量のものが分画できるTSKー4000SWにより分画し, トリプシン阻害物質との異同を観察しながら分離と精製を試みた. 前報と同様の方法で10mMTrisーHClの緩衝液, pH7.1に抽出した大豆抽出液を, 0.22μmのフィルターで瀘過し, この標品をただちにTSKーG4000SWを用いて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った. その結果, 推定分子量が100万以上のものから5千以下のものにまで分画されたが, この中でコラゲナーゼ活性を阻害する物質は分子量4万以上の高分子画分のすべてに認められた. 活性の存在した5つの画分の中で, 分子量の大きな3つの画分にはトリプシン阻害する活性は全くなく, 他の分子量の小さな2つの画分には強いトリプシン阻害活性が存在していた. コラゲナーゼ活性の阻害物質のみが存在した3つの画分をSDSーポリアクリルアミドゲルによる電気泳動を行うと, いづれの画分も数本のタンパクバンドに分れ, 本物質は単一のものではなく, いくつかのサブユニット的な電子が会合して存在していることが示唆された. 現在, 本物質をさらに精製し, 構造解析を行うとともに, ヒト歯肉由来の線維芽細胞を用いてBacteroides gingivalis由来のSH依存性コラゲナーゼとの相互反応による影響を追求中である.
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