研究概要 |
(1)大腸菌におけるポリアミンのトランスポート系はプトレスシン,スペルミジン・スペルミンの2つの輸送系が存在し、そのいずれもがエネルギー源としてプロトン駆動力を必要とすることを膜小胞を用いて証明した。また、輸送変異株の分離をニトロソグアニジンを用い試みたところ、スペルミジン・スペルミンの輸送蛋白,プトレスシンの輸送蛋白,及び両蛋白欠損の3種類の変異株の分離に成功した。 (2)ポリアミンによって合成促進をうける大腸菌のMr.62K蛋白質(polyamine induced〔PI〕protein)の諸性質を検討した。このPI蛋白はペリプラズムに存在し、自分自身がリン酸化され、かつペリプラズムに存在する数種の蛋白質をリン酸化するKinase活性をもつことが明らかとなった。この蛋白質の生理的意義の解明及び遺伝子のクローニングを目下継続中である。 (3)牛リンパ球の細胞培養系を用いて【Na^+】/【H^+】アンチポーター活性とポリアミン生合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素活性の関連について検討した。牛リンパ球をConAで活性化すると両活性とも上昇するが、【Na^+】/【H^+】アンチポーター活性をアミロライド誘導体で阻害してもオルニチン脱炭酸酵素活性は阻害されなかった。DNA合成はポリアミン量に依存する為、DNA合成もアミロライド誘導体でほとんど阻害をうけず、【Na^+】/【H^+】アンチポーターの細胞増殖の引き金としての役割は否定された。 (4)牛リンパ球の細胞増殖は細胞をポリアミン欠乏にすると阻害される。その原因はポリアミン欠乏によりチミジンキナーゼ合成が著しく低下する為であることが判明した。この合成低下がどのレベルでおこっているかをチミジンキナーゼのmRNA量を測定することにより検討したところ、ポリアミンによるチミジンキナーゼ合成の調節はposttranscriptionalなレベルでおこることが判明した。
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