研究概要 |
(1)61年度に分離した大腸菌ポリアミン輸送蛋白欠損株に,PACYC184プラスミドに組みこまれた野生株のDNA断片をranstormし,ポリアミン輸送蛋白の遺伝子のクローニングを試みた. その結果,プトレスシン輸送蛋白遺伝子のみを含むクローンとプトレスシン及びスペルミジン・スペルミンの2つの輸送蛋白の遺伝子を含むクローンが得られた. 塩基配列を決定しないとはっきりしたことが言えないが,以上の事実はプトレスシン輸送蛋白の遺伝子は2個存在することを示唆する. (2)ポリアミンによって合成促進をうける大腸菌のMr.62K蛋白質(polyarine induced[PI]protein)の抗体を作製し,PI蛋白の産生を抗原・抗体反応で確認する手法により,(1)と同様な方法でPI蛋白遺伝子のクローニングを試みた. その結果,PI蛋白の遺伝子を含む2つのクローンが得られたので,塩基配列を決定する実験を目下継続中である. (3)牛リンパ球の細胞増殖はポリアミン欠乏により阻害される. その際,チミジンキナーゼ合成が他の酵素に比べ著しく低下したので,その原因を究明した. チミジンキナーゼのmRNA量をNorthern blot aanalysisで測定したところ,mRNA量はポリアミン欠乏によってもほとんど変わらなかったが,ポリゾーム上におけるチミジンキナーゼmRNAは,ポリアミン欠乏により,著しく小さいポリゾーム上に移行していた. この結果は,ポリアミンがチミジンキナーゼ合成を蛋白合成レベルで調節していることを示唆する. (4)牛リンパ球の細胞増殖におけるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)の誘導の引き金にどのような因子が関与しているかを探索した.CAMP依存protein Kinaseとprotein kinase Cが誘導に関与していることが判明したが,これらkenaseの活性化がODCをどのように誘導するかは未だ明らかでない.
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