ヘキソキナーゼが、特に好気的解糖活性の高い組織細胞で、ミトコンドリアに結合した形で存在していることをグルコース代謝制御における意義という見地から検討し、以下のような成果を得た。 1)ミトコンドリアへの結合には、細胞内環境、特に従来いわれていたマグネシウムイオンだけでなく、カリウムイオンの関与、が重要であった。 2)この結合により、ヘキソキナーゼ活性が制御されるだけでなく、酵素蛋白として安定化されることが示された。 3)結合がよく知られている脳との関連で、培養神経芽腫細胞についてもヘキソキナーゼの細胞内分布をしらべ、ミトコンドリアに30%ていど結合していること、アイソザイムとしては脳と同じくI型であることを認めた。 4)これらの検討を通じて、II型に比べてI型がミトコンドリアにはるかに結合し易い性質を有し、またこの結合は細胞外のグルコース濃度変化には左右されないことを明らかにした。 5)正常肝ではヘキソキナーゼはほとんどミトコンドリアに結合していないが、再生肝でも同様であった。しかし、腹水肝癌細胞では株によって若干の結合がみられた。 6)正常肝の場合結合がみられないのは、ヘキソキナーゼが生合成後のプロセシングによって結合ドメインが切断されるためであるという可能性を検討し、肝にはヘキソキナーゼの酵素活性に影響せずミトコンドリア結合能を消失させる活性が存在するのに脳にはないこと、この活性はチオールプロテアーゼ型であること、リソソーム外表面にかなりの割合で存在すること、作用様式はキモトリプシンに似てN末端の比較的小さな疎水性ペプチドを切断するとみられること等を明らかにした。 設備備品は細胞等の保存に活用した。
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