研究概要 |
ラット肝のミクロゾーム(Ms)リン脂質パーキオシドが発癌性薬物9,10ージヒドロベンゾ[a]ピレン(H.ナ_<2.ニ>BP)のエポキシ化の直接的活性酸素源になることを証明することができたので, 以下にその概要を記す. 1)ラット肝ミクロゾームから単離したリン脂質は光増感法による酸化により, 化学的に,比較的安定なミクロゾームリン脂質パーオキシド混合物(MsOOH)を与えた. 2)MsooHの生成経時変化をGLCにより, リン脂質構成未変化脂肪酸組成の変化を指標とし,追跡した結果, NADPH存在下ADPーFe^<2+>によって誘起されるMsの脂質過酸化と酷似したリン脂質構成脂肪酸の変化を示した. すなわち, 両者とも多不飽和の脂肪酸残基程速やかに過酸化された. 3)H_2BPはADPーFe^<2+>存在下MsooHによって速やかに反応し,Salmonella typlimurium TA98に対する強変異原物質H.ナ_<2.ニ>BP78ーエポキシドを生成した. このエポキシドは単離され,標品と同定された. 4)MsooHによるH_2BPの7,8ーエポキシ化は,Fe^<2+>不在下では進行せず,Fe^<2+>共存下でも,αートコフェロール,BHAなどのアルキルオキシラジカル(MsO^.およびアルキルパーオキシラジカル(Msoo^.)捕捉剤共存下では全く進行しなかった. 5)ADPーFe^<3+>ーNADPHによりLPOが誘起されたMsは,H_2BPより変異原性物質を生成したが,この系よりH_2BP7,8ーエポキシドの酵素的水解物H_2BP7,8ージヒドロジオールが単離証明された. この系にαートコフェロールまたはBHAを共存させておくと,H_2BP7,8ージヒドロジオールの生成は認められず,H.ナ_<2.ニ>BPのTA98株に対する変異原性も検出されなかった. 6)肝細胞内の抗LPO因子としてのMsグルタチオンパーオキシダーゼ(GSHRx)の存在がつきとめられた.
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