研究概要 |
昨年度ブタ卵子透明帯糖蛋白の精製とアスパラギン結合型糖鎖の全体像の解析を行なったのに続き、本年度はムチン型糖鎖の解析、および精子レセプターとなる糖鎖の検索を行なった。まずムチン型糖鎖は中性糖鎖としては2種類が、酸性糖鎖としては4種類が主な構成糖鎖として存在した。酸性糖鎖はアスパラギン結合型の場合と同様、硫酸化されたものが大部分であることがわかった。また卵子と精子との結合の際、精子レセプターとなる透明帯の糖鎖の検索に関しては以下のように仕事を進めた。まず透明帯糖蛋白よりアスパラギン結合型,ムチン型ともにヒドラジン分解、【^3H】標識無水酢酸によるアセチル化などの方法を開発し、できるかぎり比活性の高い糖鎖標品を調整した。これら標識糖鎖混合物を精子に反応させて、直接精子に結合した糖鎖を分離し、化学的方法を加えて解析した。一方、標識糖鎖をあらかじめいくつかの画分に分離し、いずれの画分が精子と卵子の結合を阻害するかを調べた。この結果、ムチン型の硫酸化された糖鎖でしかもポリラクトサシン構造をもつ長い糖鎖が卵子,精子間の結合、つまり卵透明帯上の精子レセプターである可能性が強く示唆されるに至っている。 また着床の分野では子宮内脱落膜細胞株TTK-1が培地中に分泌する免疫抑制作用をもつ物質の精製,純化を進めると同時に、その作用機序についてさらに検討した。精製に関しては低速によるゲル3過,イオン交換,さらに高速液体クロマトグラフィによるイオン交換クロマト,疎水クロマト,逆相クロマトなどを組み合わせ、分子量約5万,等電点5〜6の蛋白を単離することができた。一方この物質を種々の培養細胞株に加えて調べた結果、数種の例外をのぞいて間葉系由来の悪性化細胞株に選択的に増殖抑制作用を示すことがわかった。
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