〔目的〕受精(哺乳類)の種特異性と同種間認識を推進する分子機構について解析した。受精卵(初期胚)の着床は成功した自然のアログラフトであり、その免疫学的機序について母体の胎盤脱落膜細胞に焦点をしぼりその産生する物質の機能と構造について研究をすすめた。 〔成果〕受精の免疫生化学的解析に耐えうる試料としてブタ卵を選んだ。ブタ卵より透明帯を分離・調整法の確立。単クローン抗体で受精レセプターを検出しようと試みたが出来なかった。しかしブタ透明帯とヒト透明帯との共通抗原部位を認識する抗体が得られ、この抗体によってヒトの受精阻害がおこることが観察されており、この共通抗原蛋白によって将来ヒトの避妊ワクチンの開発も考えられた。また受精の種特異性を担うと考えられる卵透明帯の糖鎖の構造解析は中性糖鎖についてはほぼ完了し、現在論文にとりまとめている。ひきつづき酸性糖鎖の解析に着手している。これらの糖鎖のうち受精に関与する糖鎖と他種の受精レセプター糖鎖との構造化較によって受精における種特異性の実体が明らかとなるであろう。同種認識機序として精子のクラスIIMHC抗原と卵側のL_3T_4様抗原(マウス)の相互作用が強力な候補分子種として浮び上ってきた。前者の発現については免疫学的方法、遺伝子工学的方法で確認し、後者の物質的同定を急いでいる。次に、母体の胎仔に対する免疫的制御機序については、ヒト胎盤脱落膜の新鮮組織の短期間培養上清の免疫抑制作用を確認したあと、この培養細胞株の上清を検討した。この細胞株上清は【○!1】免疫抑制作用【○!2】Malt_4を始めとする主に間葉系由来の悪性細胞株の増殖抑制作用【○!3】マウスの初期胚増殖、分化促進作用等多彩な生理活性作用を有していた。この上清からの活性物質の収量は極めて微量であったので、比較的大量に活性物質を得るためのInductionの系を考案し、それぞれのassay系に対応した活性物質の単離をすすめている。
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