WHHL(Watanabe heritable hyperlipidemic)rabbitは、コレステロール代謝に重要な役割りをもつLDL受容体が先天的に欠損しているために、生下時から高コレステロール血症が、また未成熟齢から大動脈、冠状動脈の粥状硬化が必発する。しかしながら心筋梗塞は高齢時には多発するが、若齢時の発生率は著しく低下であった。そこでわれわれは育種手法によって心筋梗塞好発系(MI系)WHHLの開発を試みた。 〔方法〕(1)約700匹のWHHLの家系図から、冠状動脈に高度の狭窄病変、ならびに心筋病変が多発した家系を選抜して、近親交配、選抜交配を行った。(2)MI系は314匹生産し、そのうちの88匹を剖検した。Non MI系は392匹生産し、93匹剖検した。(3)冠状動脈と離筋の両病変は、交配世代間ならびにMI系とNon MI系の間で比較して育種効果を調べた。 〔成績〕(1)冠状動脈の粥状硬化病変(以下病変)は全例に発生した。(2)狭窄病変面積は、F_1では66%、F_3で77%、F_4で78%と拡大した。Non MI系は56%であった。(3)75%以上の高度な狭窄病変の発生率は、F_1では41%、F_3では67%、F_4では75%であった。Non MI系では26%であった。(4)心筋梗塞の発生率は、F_1では15%、F_3では26%、F_4では25%であった。Non MI系では13%であった。(5)WHHLの心筋梗塞の発生状況をみると、成熟齢前後では心筋梗塞の発生に、必ずしも冠状動脈に75%以上の狭窄病変を必要としなかった。10月齢以後の心筋梗塞の発生には冠状動脈に75%以上の病変が存在した。(6)心筋梗塞は雄に有意に高率に発生した。 以上、われわれが行ったMI系の開発は、世代の進行とともに病変が拡大し、対照群との比較においても病変の拡大は顕著であり、その開発方法に誤りはなかった。今後はとくに雄WHHLを優先して選抜し維持することで、開発が促進されると考える。
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