研究概要 |
成人T細胞性白血病(ATL)は南西日本に多発し、多い地方では抗ATLA抗体陽性者(キャリア)が20%を越える地域もある。しかし、われわれの東大病院における供血者および妊婦の調査では非多発地帯である東京でも約1%の抗体陽性者がいることがわかった。又、輸血後患者を追跡した結果、約10%に抗ATLA抗体陽転例が認められた。抗ATLA抗体陽性者は80単位以上の輸血例であった。 抗体陽性者の抹梢血リンパ球を用いてEBウイルスを感染させてB細胞をトランスフォームさせ、抗ATLA抗体のヒトモノタローナル抗体を作成しようと試みているが未だ成功していない。 最近、抗ATLA抗体陽性である背髄炎(HAM:HTLVassociated myelopathy)の患者が2例見つかり、これらの患者とATL患者の相違を調べる目的でマウスに感染実験を行った。HAMの患者から採取した抹梢血と髄液およびATL抗体産生細胞株(MT2)を用い、生後1日目と4週間後のマウスに脳内接種し、4週間後のマウスには静脈内接種も行った。その結果このウイルスは4週間後の方に感受性が認められた。 また、MT2細胞を用いて不活化実験を行った。実用的な方法として、紫外線照射法と煮沸により細胞生存率を観察した。【10^4】cell/mlの細胞を10秒,20秒,30秒,60秒煮沸し4日以上観察すると、30秒以上は1日目より生存細胞数は0になったが20秒以下では4日目になっても8×【10^2】の生存細胞が認められた。また、紫外線照射による影響は直射線量38400マイクロワット,反射線量19200マイクロワットで10分以上照射した場合、3日目生存細胞が0となった。これらの実験により煮沸の方法が紫外線照射に比べて短時間で不活化できることがわかった。
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