研究概要 |
3年度は1,2年度の研究成果をふまえて作成したセルフケア調査票及びうつ尺度を用いて、一般成人男女450名を対象に郵送法による質問紙調査を行った。また精神疾患患者のセルフケア行動(対象者34名)の調査及びセルフケア看護モデルの評価を行った。3年間の研究成果の概要を以下に示す。 1.一般成人のセルフケア行動と精神の健康との関係 精神の安定が保たれていないと、セルフケア行動全般が気分に影響されやすく、身体に変調をきたすことが多く、日常生活がコントロールできにくい。特に、排せつ、睡眠は状況の変化で影響を受けやすく、コントロールできにくい。特に、排せつ、睡眠は情況の変化で影響を受けやすく、コントロールできにくく、満足度も低い。また不眠になりがちであり、仕事による疲労感が強い。つきあいの頻度が少なく、ソーシャルサポートの満足度も低い。このように精神の健康状態が日常生活のセルフケア行動とどのように関係しているのかということが明らかになった。 2.精神疾患患者のセルフケア行動 精神疾患患者は、急性期にはほぼ全てのセルフケア行動が乱れる。その中で食事は改善しやすいが、清潔やつきあいは改善しにくく、睡眠は服薬によるコントロールが必要である。疾患別では、分裂病やアルコール依存症は食事の崩れが大きく、そううつ病では排せつがコントロールしにくい。これは、セルフケア行動が精神病理と深く拘わっていることを示すものであろう。 3.セルフケア看護モデルの評価及び今後の課題 セルフケア看護モデルを用いて、1ケ月に2回精神障害者の事例検討を3年間行うと共に、日常生活行動の変革実験を13人の参加者が6ケ月行った。習慣化した日常生活を修正することは認識化への抵抗や自己契約の破棄等の問題を生じることが明らかになったが、そのことと精神の力動性の関係を追求する課題が残されている。
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