研究概要 |
本研究の今年度の成果・知見は以下の通り. 1.カナ漢字変換のよる入力作業では, 漢字の読みと打鍵が干渉し, 本質的に作業能率が高くなりえないことを実験によって検証した. 実験は, カナ漢字変換の職業タイピスト12人について, 漢字かな交じり文と, それをかなに書き下した文の双方の打鍵について反復3回の打鍵速度・エラー率の向上を測定した. 実験結果の解析では, かなに書き下したテキストの方が打鍵成績が良く, 漢字の読みが打鍵に干渉に起こしていることが示された. 2.カナ漢字変換による入力が, コード化入力によるものより入力作業の心理的負荷が大きいことを実験により確認した. 実験は, それぞれの入力方式を日常利用している職業タイピスト12人ずつを被験者とし, タイプ作業と別の負荷作業を同時に実行させて, タイプ作業のみの打鍵速度との比較をする. 実験では, カナ漢字変換による入力(ただし変換操作は省く)の方がコード化入力より有意な打鍵成績の劣化を示した. 3.かな漢字変換もコード化入力も, コピータイプ作業において, 処理の心的水準が意味に深く関わるレベルにまで達していないことを, 実験により示した. 実験は, 前実験2と同じ24人の被験者について, 心象の深さの異なる2字熟語のタキストスコープで投写したものをタイプさせ, その後その偶発記憶再生の度合いを測定するものである. 過去の実験では, 意味に関連する作業なら心象の深さ(3レベル)に従って記憶の再生の差が有意に現れるのであるが, 本実験では両者ともレベル間の差が現れなかった. この結果から, 職業タイピストは, 熟語が表わす意味には深く関わらずにコピータイプ作業を進めていることが示された.
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