研究概要 |
通常動物と無菌動物の特性を比較した研究により、腸内常在フロ-ラが宿主の栄養をはじめとする種々の生理機能から感染・発癌などの病態までの生体における多岐にわたる現象に関与していることが明らかにされている。したがって、無菌動物に既知の腸内菌を投与して腸内に定着させて作出したノトバイオ-ト、とくにヒトフロ-ラノトバイオ-ト(HFGb)は、ヒトの栄養・内分泌・薬物代謝・免疫・感染・発癌・老化などにおける腸内フロ-ラの役割を解明するためのきわめて有力な研究手段となる。本研究では、まずヒトの腸内フロ-ラ構成菌種によってバイオメディカルリサ-チにスタンダ-ドとして供しうるヒトフロ-ラノトバイオ-トを作出し、その腸内酵素活性、生理機能並びに病理学的特性を明らかにし、さらに、これを用いて、腸内フロ-ラの生態、栄養、薬物代謝、癌などの研究における有用性をいくつかの実験モデルとして呈示する目的で研究を行った。すなわち、本年度は健康人1例の糞便【10^5】希釈液【c!^】調製し、糞便菌叢の構成を検索するとともに、その代表株として117株を分離し、菌種の同定を行を行い保存した。次いで、同一サンプルの嫌気的希釈液を無菌マウスに経口投与し、ヒトフロ-ラマウス(HFM)を作出した。HFMの腸内フロ-ラの構成を調べたところ、菌群レベルの構成においては、ほぼ投与糞便希釈液のそれに近似し、Bacteroidaceac,Eubacterium,Pebtococaceae,Bifidobacterium最優勢、Enterobacteriaceae、Streptococcus.中等度の菌叢バランスであることが明らかにされ、また、菌種レベルの構成においては、現在、HFMより90菌株を分離し、菌種・菌型の同定を行っているが、Lactobacillus acidophilus groupの菌種の定着は認められず、さらに、投与糞便希釈液で検出されたにもかかわらず、HFMでは定着していないと考えられる菌種もみられ、定着する菌種は投与糞便のそれより減少することが明らかとなった。
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