通常動物と無菌動物の特性を比較した研究により、腸内常在フロ-ラが宿主の栄養をはじめとする種々の生理機能から、感染・発癌に対する抵抗性にまで関与していることが明らかにされている。したがって、無菌動物に、ヒトの腸内菌を投与して作出したヒトフローラノトバイオート (HFGb) は、ヒトの栄養・内分泌・薬物代謝・免疫・感染・発癌・老化などにおける腸内フローラの役割を解明するためのきわめて有力な研究手段となる。本研究は、ヒトの腸内フローラ構成菌種によってバイオメディカルリサーチに供しうるヒトフローラノトバイオートマウスを作出し、その腸内フローラの構成バランスと酵素活性を明らかにし、腸内フローラの生態・栄養・薬物代謝・発癌などの研究における有用性を呈示することにある。本年度は、昨年度に引きつづきHFGbマウスの作出を試み、さらにその糞便酵素活性を測定した。すなわち、8週齢BALB/C♂マウス5匹にBacteroides、distasonis、B.fragilis、B.ovatus、B.thetaiotaomicoon、B.vulgatus、Megasphaera、elsdemii、Veillonella、parvula、Clostridium、clootridiifoume、C.innocuum、C.ramosun、Eubacterium、aerofaciens、E.ventriosum、Bifidobacterium、adolescentis、B.longum、Escherichia、celi、Enterococeus、faeciumの計16菌株を経口投与した結果、HFGbマウスの腸内フローラの構成は菌株投与後8週においてほぼ安定し、E.coli、S.faeciumおよびV.parvulaがヒトの腸内フローラの構成よりやや高い値を示した以外は、近似した腸内フローラのバランスをもったHFGbマウスを作出することができた。その酵素活性としてNitrate reductase、Nitro reductase、β-glucuronidase、β-glucosidaseを測定したところ、β-glucuronidaseがヒトのそれに比較してやや低い値を示した以外はよく一致していた。今後、HFGbマウスを用いて、その腸内フローラの構成と酵素活性を変動させる要因を解折する必要がある。
|