研究概要 |
進行性に骨格筋の弱力化が認められる行動異常突然変異体(B6CBA/JーCRO)マウスでは骨格筋或いは血漿などで様々な異常を発現することが判っているがその一つに8ヶ月令以後の骨格筋線維中に高頻度に空胞形成が認められるということがある. 昨年度の電顕を用いた組織学的検索の結果,空胞中にはラメラ構造をしたいわゆるミエロイド体と思はれる物質を含んだテュブラルアグリゲートの集合物が存在することが確かめられた. 即ちこの集合物は骨格筋中の膜構成分の一部が何等かの原因により欠失又は破壊されたために完全な膜構造が形成出来ない結果,異常な構造物として畜積されたものと推測される. 今年度は筋線維中に存在する膜構造の蛋白成分を検討する目的で主としてSDSーPAGE電気泳動法による解析を行った. 8ヶ月令のcroーマウス後肢筋のホモジネートから筋小胞体画分(SR)を採取し(Butcherらの方法),これを試料として電気泳動を行った結果構成蛋白バンドの一つが欠失していることが見出された. このバンドは分子量約50,000程度の蛋白で,2本のバンドが近接して泳動されるうちの1本である事が判った. そこでCroーマウスでのこのバンドの欠失を月令別に追跡したところ,3ヶ月令迄は,正常対照と同じ位置にバンドを持っているが,それ以降ではこのバンドが消失することが判明した. 更にこのバンドの持つ機能を検討するため正常対照マウスの試料を用いて,泳動後のスラブをステインオール法で染色しCa^<++>との結合をしらべた結果,欠失バンドはCa^<++>に対する結合能を持っていないことが認められた. 従ってCa^<++>結合蛋白として知られるカルセクエストリン(分子量約60,000と推定される)とは違う蛋白であることが判明した. 更に分子量が類似していることからMeissnerらのM_<55>蛋白に担当する可能性が考えられるが,その機能に就いての検討は目下続行中である.
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