研究概要 |
自然染色体突然変異個体は、環境汚染の染色体に及ぼす影響評価の基礎資料として、また方射線による染色体突然変異誘発機構を知る上にも重要と思われる。この点を考慮して、各種野生マウスおよび近交系マウスを含めたMas musculusにおける自然状態下での染色体突然変異の頻度とそのパターンを雄マウスの精巣を用いて調査している。現在までに野生マウス5亜種442匹(M.m.molossinus,193;M.m.damesticus,132;M.m.castaneus,97;M.m.bactrianus,19;M.m.urbanus,1)および近交系マウス558匹(C57BL/10,295;C3H61;A,44;CBA,22;129,18;その他118)の合計1000匹について調査を終え、下記の4匹の、染色体突然変異個体を検出した。(1)XYY(NO.148,M.m.castaneus)(2)XYY(NO.441,M.m.castaneus)、(3)相互転座Tr(2;8)(NO.834,C57BL/10)、および(4)NO.10トリソミー(NO.636,C3H)。これらの染色体突然変異を実験に導入するため、交配実験を行った結果、(1)と(2)は正常細胞とのモザイク個体で、得られた子孫はすべて正常な染色体を持っていた。また(3)と(4)は各3匹ずつの雌マウスと交配を試みたが、不妊のため子供を得ることはできなかった。これらの実験の途上で、小笠原より採集されたマウスに動原体融合多型が発見され、近交系マウス(BALB/C)と交配を試みたところ、妊性のある【F_1】が得られたので、引き続きBALB/Cに戻し交雑を行い【N_2】世代の分離に成功した。今後さらに野生マウスより自然染色体突然変異の検出を試みると共に、小笠原マウスより得られた動原体融合保有マウスをホモ状態にし、染色体突然変異のコンジェニックマウス系統を確率するため、さらに戻し交配を続け、同時に遺伝学的解析も進める予定である。
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