研究概要 |
変異原物質や放射線による染色体突然変異の誘発機構を知る上での基礎資料を得るため、自然染色体突然変異の頻度パターンを雄マウスの精巣を用いて三年間に渡って調査を進めてきた。3000匹の野生のマウスおよび近交派マウスについて探索した結果、7匹の染色体突然変異個体(XYY2匹、Y^m1匹常染色体トリソミー2匹および相互転座2匹)が得られたが、原発の動原体融合は1例も観察されなかった。一方、放射線照射では動原体融合はほとんど誘発されないが、亜種間雑種・一部の癌・長期培養細胞等に多発する現象が明らかになった。これらの成果を踏えて、染色体突然変異誘発機構に関する理論解析を行い、論文として学術発表を行った(研究発表参照)。 またこれらの研究の途上でオガサワラ産野生マウスに発見された動原体融合多型は、BALB/Cに戻し交雑をN_<13>まで行った後Rb(9,15)-Nsとして系統化し現在F_<13>まで世代を進めている。同じくウルムチ産野生マウスに発見された第一染色体のヘテロクロマチン挿入(A^i_1)はBALB/CマウスにN_4までくり返えし戻し交雑し、目下A^i_1ホモ個体を得るため、ヘテロ同志の交雑を行っている。これらに加えて、近交系マススB10BRにもY染色体の部分欠失による微小化(Y^m)が発見されB10・Y^<del>と命名して系統維持を行っている。 本研究結果は、染色体進化と種分化、放射線や変異原物質により誘発された染色体変異を自然突然染色体変異の間の質的・量的差異に関する細胞学的研究に貢献しうるものと期待される。
|