研究概要 |
親から子へ筋線維組成がどれだけ受け継がれるかを調べるために, 腓腹筋深層部の遅筋線維占有率の高いラットを選択交配させて〓断的な検討を試みた. 遺伝的な検討は今後の遺伝率を予測する推定の遺伝率および選択交配によって一世代ごとに求められる実現の遺伝率を算出して行われた. 推定の遺伝率は親子の値から求める子ー親回帰法および兄弟姉妹のみの値から求める兄妹分析法があるが,本研究では親から子への遺伝を検討する目的のため, 子ー親回帰法を採用した. その結果,推定の遺伝率においては,雄仔および雌仔の親に対する値に関しては-0,38から0,99の大きなばらつきが見られるものの,平均仔(雄仔と雌仔の平均値)の親に対する値では0,27〜0,29の安定した値が認められた. 一方,実現の遺伝率では選択偏差(母集団平均値と選択集団平均値との差)8,6%に対し,選択反応(母集団平均値と次世代の集団平均値との差)4,0%が示され,0,47の値が得られた. Falconar(1981)によれば,種の維持に重要な形質はその生物の長い進化の歴史の間で自然選択の影響を強く受けるので, その遺伝子は固定し,その結果として遺伝率は低くなるとしている. このことから筋線維組成はおよそ0,3〜0,5の遺伝率を有する, 比較的遺伝的に固定した形質であることが示唆された. さらに今後,選択交配を続れることによって, 1世代あたり遅筋線維占有率の増加がおよそ2,4〜4,0%起ることが予想され,10世代以降100%に近づくものと思われる. しかしながら100%になる前に上限に達した時には, 一度ランダムな交配にに戻し,それから再び選択交配を行うという処置を施す計画である. 本研究の結果は3世代までのものであり, さらに追跡調査を行い最終年度に明確な結論を得たいと考えている.
|