骨および筋におよばす遺伝とトレーニングの影響を縦断的に、ミクロ的な視点から検討した。筋に関しては、近時、スポーツ適性を決定する重要な標識の1つと考えられている筋線維組成をパラメーターとして、選択交配法によってこの組成が親から子へどれだけ受け継がれるかについて、本年度は選択第5世代(G_5)まで検討した。また骨に関しては各世代ごとにトレーニングを負荷し、これらの子孫の骨の成長にトレーニングがどのような影響をおよぼすかを第3世代(G_3)まで検討した。その結果、筋に関する系におっては、脚筋の%ST線維の分布状態において、G_2からG_4で%ST線維の低い個体が減少し、%ST線維の高い個体が増加する傾向が認められた。G_0とG_3、G_4間には有意義が認められ、選択交配によって集団平均値が%ST線維の高い方向へ移行していることを示した。またG_0からG_4における%ST線維の実現の遺伝率は0.17±0.04であった。このことは筋線維組成は親のばらつきの約17%が子の筋線維組成に影響をおよぼすことが示唆される。また、数世代にわたるトレーニングが骨の成長におよぼす影響を検討した系にあったは(1)累代的なトレーニングによりコントロール群の成長および体重あたりの脱脂乾燥骨重量、骨幹部骨重量の有意な増加が観察された。(2)累代的なトレーニングによりトレーニング群の体重、体長、骨長、脱脂乾燥骨重量、骨幹部骨塩量の有意な増加が観察された。(3)累代的なトレーニングにより、骨重量におけるコントロール群に対するトレーニング群の増加率は世代を経るにつれて増加した。これらのことから累代的なトレーニングは子孫の骨発育およびトレーニング効果の発現に対し促進的に働き、骨量増加を導くことが示唆された。骨および筋のパラメーターを用いて進行しているこれらの2つの系は、いずれもまだ世代が十分進んでおらず、さらに継続して累代化を進める必要があると考えられる。
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