研究概要 |
本年度は、運動負荷条件と血清テストステロン(以下T)の応答に関するパイロット研究〔実験1〕,性格特性と運動負荷に対するT応答の関連〔実験2〕,競技選手と非鍛練者の安静時T濃度の比較の3実験研究を実施した。1.〔実験1〕,多段階運動負荷テスト時の乳酸応答から、軽・中・強・最強の4強度を選定し、それぞれの強度に対するT応答を調べた結果、軽強度・長時間運動がT濃度の減少を招きやすいと推察された。 2.〔実験2〕,典型的なTypeAとBの性格特性を持つ被検者をサッカー選手および非鍛練学生から選び、50%【Vo_2】max強度で4時間の運動を施行し、運動前,2時間後,4時間後,1〜3日後のT濃度と関連ホルモンを追跡した。その結果、運動中にT濃度が減少する例は皆無であった。しかし、1〜3日後の間に前値より減少した例が72%(25例中18例)認められた。性格特性のTypeA,B間で比較すると、極だった差異はなかった。しかし、サッカー選手では、TypeAが8例中3例にT濃度の減少が認められなかったが、TypeBは全例のT濃度が減少した。サッカー選手は、非鍛練学生に比べて安静値T濃度は有意に高かった。運動前および1日後の血奨ノルアドレナリン濃度(NA)とT濃度に有意な逆相関が認められ、高NA濃度がT濃度減少の一要因であると推察された。 3.〔実験3〕,一流長距離選手(19名)とサッカー選手(15名)と非鍛練学生(10名)の安静時T濃度を比較した。一流長距離選手とサッカー選手のT濃度は、非鍛練者に比べて有意に高かった。この結果は、Wheelerたちのマラソン愛好家のT濃度が低いとの結果と相反する。 以上の結果から、運動ストレス以外の精神的要因や初期T濃度がT濃度の減少に関与している可能性が示唆され、今後の検討課題が明確になった。
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