研究概要 |
ブタ心筋ミオシンよりアクチン結合10kDaペプチドを精製しアミノ酸分析を行った。既にKavinskyらにより報告されているウサギ心筋S-1の一次構造との比較から、心筋ミオシンのアクチン結合-10kDaペプチドは、ウサギ骨格筋の10kDaペプチドよりN端側で6残基短いことが分かった。更にホタテ平滑筋ミオシンよりアクチンと結合する9kDaのペプチドを精製し、N端の一次構造をMKNLYSTHPHFVR・・Iと決定した。この配列とウサギ骨格筋などの報告されているミオシンの一次構造を比較すると、この9kDaペプチドのN端は、SH2基より36残基N端側に位置することになる。また、C端は9kDaという分子量を考慮すると、SH1より37残基C端側と推定できる。ウサギ骨格筋、ブタ心筋、およびホタテ平滑筋の三種のアクチン結合ペプチドの共通部分にアクチン結合部位が存在すると仮定すると、それはSH2より4残基N端側に寄った位置から始まる52残基内となる。 52残基中共通の構造を持つSH1,SH2付近がアクチン結合部位である可能性が高い。そこでSH1周辺の一次構造を持つペプチドを化学合成し、アクチンとの結合を測定した。SH1周辺のアミノ酸配列はVLEGIRIC(SH1)RKGなので、C端側よりVLEG,IRI,CRKGの三種のペプチドおよびIRIのCRKGを縮合させたIRICRKGを合成した。4種のペプチドについてF-アクチンとの親和性を測定した。その結果、IRIおよびIRICRKGは、それぞれmM,および0.1mMのオーダーの解離恒数で結合することが分かった。強く結合したIRICRKGの配列中CRKGの部分のみでは殆ど結合できなかったのでN端側のIRIの部分が重要と思われる。また、IRIよりN端側の配列を持つVLEGも殆ど結合しなかった。従って、SH1のN端側に隣接するIRIがアクチン結合に最も重要な部位であると結論した。
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