研究課題/領域番号 |
61480457
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物質生物化学
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研究機関 | 静岡県立大学 (1987-1988) 静岡女子大学 (1986) |
研究代表者 |
伊勢村 護 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (40028197)
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研究分担者 |
小堺 正史 東北大学, 医学部, 助手 (20004624)
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研究期間 (年度) |
1986 – 1988
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キーワード | 胎盤フィブロネクチン / 組織形成 / 羊膜上皮細胞 / ラミニン / プロテオグリカン / 細胞外マトリックス |
研究概要 |
フィブロネクチンは、血漿由来のものと培養細胞由来のものの2つに大別されるが、組織に存在するフィブロネクチンの特性やその由来について不明な点が多いため、本研究では胎盤フィブロネクチンの化学構造と生理機能について詳しい検討を加えた。胎盤より抽出、精製したフィブロネクチンは、分子量や糖含量の点で異なるが、糖鎖の化学構造を決定した結果、両者の糖鎖は全く異なることがわかった。また、胎盤の組織培養によって合成されるフィブロネクチンの糖鎖が、レクチンとの反応性において血漿由来のものと異なることがわかった。また、胎盤組織におけるフィブロネクチンの局在を免疫組織化学的に検討した結果、血管内皮細胞、線班芽細胞様間質細胞など数種のフィブロネクチン産生細胞が同定された。以上の結果から、胎盤組織では血漿由来でなく、組織独自の細胞によりフィブロネクチンが合成され、組織に保持されていると結論された。本研究途上、フィブロネクチン結合性プロテオグリカンを発見し、その特性の一部を明らかにすることができた。本プロテオグリカンは培養ヒト羊膜上皮細胞に対し、それ自身だけでは生物活性をあまり示さないが、フィブロネクチン、ラミニン表面に結合させておくと、羊膜上皮細胞の伸展を著しく促進することがわかった。胎盤、肝、皮膚、肺などにおけるこのプロテオグリカンの局在を調べた結果、多くの基底膜ではフィブロネクチンと共存していたが、肝硬変での門脈域や、真皮乳頭部などにおいては必ずしも局在が一致しておらず、組織形成においては異なった両者間の相互作用があるものと考えられた。以上のように、この3年間の研究によって、胎盤組織独自に合成・保持されているフィブロネクチンが細胞との相互作用を通して胎盤の組織形成に関与し、その機能がプロテオグリカンなどの細胞外マトリックス成分によって制御されていることを明らかにすることができた。
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