研究概要 |
トリpancreatic polypeptideは36個のアミノ酸残基からなり,主にポリプロリンII型ヘリックスとαーヘリックスの2つの部分によって構成されている. このpancreatic polypeptideのαーヘリックス構造部分に注目し,そのαーヘリックス部分を含みN末端方向に長さの異なるペプチド断片を合成し,溶液中での構造の安定性について円偏光二色性を用いて調べ以下の新たな知見を得た. 1.〔断片ペプチドの合成及び精製〕 固相法によって合成したペプチドPP.ナD27-36.ニD2(pancreatic polypeptideの7番目から36番目までのポリペプチドを表わす. 以下同じ. ),PP.ナD210-36.ニD2,PP.ナD213-36.ニD2,その合成ペプチドのN末端アミノ酸残基をエドマン分解法により遂次減じたペプチドPP.ナD28-36.ニD2,PP.ナD211-36.ニD2及びPP.ナD211-36.ニD2のN末端をサクシニル化したsucーPP.ナD211-36.ニD2の合計6種類の断片ペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィーを用いて能率よく分離精製した. 2.〔各ペプチドの構造形成〕 (1) 上記6種類のペプチドは何れもintactなpancreatic polypeptideのαーヘリックス相当のアミノ酸部分(13〜32残基)を含んでいるがPP.ナD213-36.ニD2以外の5種類はすべてpH4〜7付近でαーヘリックス構造を示した(イオン強度;20mM,温度;4℃). またsucーPP.ナD213-36.ニD2以外のペプチドではペプチド鎖が長いもの程そのαーヘリックス構造は安定であった. (2) PP.ナD213-36.ニD2は至適pHにおいてもαーヘリックスはほとんど形成していないが,そのN末端に負電荷を導入したsucーPP.ナD213-36.ニD2はαーヘリックスを形成した. PP.ナD211-36.ニD2もPP.ナD213-36.ニD2とは異なりαーヘリックスを形成し始めることからpancreatic polypeptideのαーヘリックス構造形成にはAsp11の側鎖の負電荷が非常に重要な役割を果たしていることが強く示唆された.
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