研究概要 |
リソゾーム酵素活性の高いテトラヒメナ細胞から無傷の長鎖ゲノムDNAを抽出するには、オクチルアルコール存在下にワーレンブレンダーで細胞を破壊しあらかじめ核画分を分離する。この核画分から1%SDS存在下に、プロテイナーゼK処理、続いてRNaseA、RNaseT処理した後フェノール抽出、透析などによりDNAを精製した。一方、申請者らはラット肝由来のステアリルCoA不飽和化酵素のcDNAを入手することができ、テトラヒメナからの脂肪酸不飽和化酵素のクローニングのためのプローブとして用いた。プラスミドに挿入されたラットの不飽和化酵素のcDNA(pDS1,pDS2)を分離し、EcoTI、PstIの制限酵素を用いて切断し、DE81ペーパーを用いてcDNA断片を抽出した。得られたcDNA断片をランダムプライマー法によりアイソトープ標識し、これをプローブとしてテトラヒメナのゲノムDNAとのサザンブロッティングを行った。哺乳動物のラットと原生動物のテトラヒメナとの間には著しい種差があり、ハイブリダイゼーションおよびその後の膜の洗浄の条件を種々温度を変えて検討した。PDS2をプローブとして用い、35%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸存在下に5XSSCで、28℃、24時間のインキュベーションにより、非常に弱いながら、EcoRI処理したDNAとハイブリダイズするバンドが認められた。そこで、ゲノムDNAを種々の6塩基認識制限酵素(BamHI,BglII,ClaI,EcoRI,EcoRV,PstI)で切断し、サザンブロッティングを行った。EcoRI,EcoRV、およびBglIIで切断したDNAとハイフリダイズするバンドが、4,5kb、2,6kbおよび、2,7kbの位置に認められた。このことはラット由来のcDNAを用いてテトラヒメナ細胞から脂肪酸不飽和化酵素のクローニングが可能であることを強く示唆した。
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