研究概要 |
1. バシラス属の好熱性細菌PS3からチトクロム酸化酵素のサブユニットI(COI)をコードする遺伝子を分離し,その塩基配列を決定した. この結果と気相シークエンサーによるCOIのN末部分のアミノ酸配列の結果より536残基よりなるCOIのアミノ酸配列を求めることができた. COIのアミノ酸配列はこれまでに知られているミトコンドリアのCOIと明白に相同であり, 疎水性で膜を貫通すると思われる12個のセグメントを持つ点でも同様である. そして,PS3のCOIの配列をその他の細菌のものとしては唯一知られている. Paracoccus denitrificansのものやミトコンドリアCOIと比較することにより,COIの機能にとって重要と思われるアミノ酸配列を推定することができた. 2. PS3のCOIの遺伝子の上流には近接してCOII(サブユニットII)の遺伝子が存在したので,この遺伝子の塩基配列を決定した. サブユニットIIは327のアミノ酸残基よりなり,疎水性で膜を貫通する2つのセグメントがN末端の側にあり中心よりやや後方にCu_Aの結合サイトがあり,その後の約100残基はチトクロムcものと推定された. すなわち,本来のサブユニットII遺伝子の後にチトクロムcの遺伝子がfuseする構造となっていた. 3. ある種のバクテリア(Pseudomonas AM1)のチトクロム酸化酵素はチトクロムaa_3型であるがH^<+.ニ>ポンプ活性を持たないことを示唆する結果を得た. 4. PS3チトクロム酸化酵素の結晶化については,その後進展はなかった. 5. X線小角散乱については,阪大蛋白研・田中博士と共同研究をすることになり試料を送った.
|