研究課題/領域番号 |
61480470
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
放射線生物学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鎌田 七男 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (00034629)
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研究分担者 |
田中 公夫 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (70116622)
峠 哲哉 広島大学, 医学部附属病院, 講師 (40034657)
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研究期間 (年度) |
1986 – 1988
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キーワード | 染色体異常 / 原爆被爆者 / 異常クローン / トランスフェクション / 癌遺伝子 / 急性白血病 / 慢性白血病 |
研究概要 |
研究の目的は放射線被爆者に多発している悪性腫瘍の発生過程を細胞遺伝学的に、また分子生物学的に追究することである。放射線により誘発された染色体変化は長年体内に残存するため質的および量的な異常の変遷を追究することで放射線によって誘発されると考えられる白血病や癌の発生過程を追究するのに好都合であるからである。昭和61年度には近距離で被爆し白血病となった9名、前白血病期の貧血患者5名、また昭和62年度には健康な近距離被爆者4名の骨髄細胞染色体を解析すると共にDNAを抽出し、それをNIH3T3細胞にトランスフェクションを行い、pSV2 Neo遺伝子で選択を行った後、ヌードマウスに注射するというin vivo selection assay法を用いて活性化遺伝子の検出を行った。この結果、白血病患者9名全例にN-rasの関与が明らかとなり、前白血病患者4名中2名に、さらに骨髄細胞に染色体異常を高頻度に持つ近距離被爆者4名中3名にトランスフォーム遺伝子が検出された。健康人3名中2名はN-rasの、1名はK-rasの関与が明らかとなった。来年度科研が許されるなら、これらN-ras,K-rasの点突然変異部の決定を行いたい。昭和63年度には血清学的方向から異常クローンの生物学的意義に迫った。すなわち近距離被爆者についてこれまで永年にわたり定期的に採血し保存している血清についてヒト正常胎盤基底膜に対する抗体の検索を行った。この抗体は癌患者とくに造血器腫瘍患者に高率に検出されるが近距離被爆者では有意に高率に出現し、被爆距離の近い程反応陽性頻度が高いことが明らかとなった。さらに陽性者群の約半数にその後造血器腫瘍3名、癌3名の発生がみられた。抗体の本体について一部検討しレトロウィルス関連抗原に対する抗体である可能性も考えられた本抗体の検索は腫瘍発生機序に迫るものであると確信できるまでになった。
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