ショウジョウバエの胸部には間接飛翔筋と呼ばれる強大な13対の筋肉があり、ハエ飛翔時にひつようなエネルギーを供給している。研究代表者は以前に優性飛翔不能突然変異を多数単離し、その中にミオシン重鎖遺伝子の変異を同定した。また別の研究者により、アクチン、トロポミオシン遺伝子の変異も同定されている。本年度の研究の成果は以下のとおりである。 1.非致死性ミオシン重鎖突然変異の同定 今まで報告したミオシン重鎖突然変異はすべて劣性致死であったが、このことはショウジョウバエが筋肉のミオシン重鎖遺伝子を1個しか持たないため、その重要な部分の変異の当然の結果と考えれてきた。しかしこの遺伝子は筋肉ごとに異なった複雑なメッセンジャーRNAのスプライシングを行うことが、最近明らかとなった。もし間接飛翔筋固有のエクソンに変異がおこった場合には、必ずしも致死とはならない。そのような変異と考えられるもの4系統を同定した。根拠は、まずこれらは致死性の変異とは遺伝学的に分離できないこと、間接飛翔筋内にミオシン重鎖タンパクが蓄積しないこと、電子顕微鏡で観察したところ太いフィラメントが見られないことである。 2.単一P因子法による突然範囲の単離 ショウジョウバエのトランスポゾンP因子をトランスポセース遺伝子と挿入される配列とに分離して、かけあわせによって単一のP因子の挿入がおこせるような系統が開発された。これを用いて、優性飛翔不能突然変異の誘発を試みた。現在までに180の候補を得、連関群の決定等を行っている。従来の化学的突然変異誘発在によるものとは異なった遺伝子が得られることが期待される。
|