研究概要 |
中心筋からYoshikawaらの方法により精製したチトクロム酸化酵素標品を濃縮することにより, 微結晶が失活することなく高収量(60%以上)で得られた. この結晶標品の金属の組成は(aughayらによって報告されている値に一致してFe:Cn:Mg:Zn=4:5:2:2であった. アミノ酸組成と結合している界面活性剤の分析によって, 活性の最小単位と考えられるFe2原子当りの分子量は約20万であることが明らかになった. 塩濃度を下げて微結晶が折出する直前まで濃縮し0°Cで得存するとずっと大きな緑色の六方晶系の結晶が得られた. この結晶から8A分解能のX線回折像が得られた. 空間群はP6_2またはP6_4で格子定数はa=b=174.5〓, c=282.2〓, α=β=90°, γ=120°であった. 少し非対称単位の分子量が40万であれば, 1dalton当りの結晶中での平均体積(1/m)が3.1A^sとなり蛋白質の結晶の密度として全く妥当である. しかし, 60万でも20万でも密度の計算値は異常になる. したがって, 従来考えられていた活性の最小単位の二量体が非対称単位として結晶中に存在することがあきらかになった. このことは2次元結晶の電子線回折の結果から予想されている結果を支持している. 我々の得た結晶標品の活性の最小単位当りのアミノ酸総数はStephanとBuseの報告した一次構造に基ずくアミノ酸数よりあきらかに少かった. これは後者の計算は一部DNAの塩基配列から予測した一次構造を用いて行われているためであろう. したがってイントロンが含まれている可能性がある. 重原子誘導体の結晶化を試みたがこの結晶は低塩濃度でしか安定でないので不成功に終った. そこで高塩濃度で結晶化を試みた結果, 正方晶系の結晶がリン酸緩術液濃度10〜50mMの間で得られた. しかし, 大きさがまだ不十分であるので, 14〓分解能のX線回折像しか得られていない. 今後はこの高塩濃度型結晶を成長させることに査点を置くべきであろう.
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