研究概要 |
エストロゲン投与による血清脂質低下はよく知られ、その作用機序の一つとしてLDL-レセプターの増加が報告されている。一方、エストロゲン投与による肝細胞内脂質合成,リポ蛋白分泌についてはあまり検討されていない。そこで、エストロゲンの肝におけるリポ蛋白代謝について、培養肝細胞を用いて検討した。 ラットに17αエチニルエストラジオール(以下EE)を投与すると、血清中コレステロール,トリグリセライド,リン脂質は低下した。EE投与により、ラット肝細胞リポ蛋白-レセプターは増加しており、この時培養肝細胞中の総コレステロールおよびコレステロールエステルの増加がみられた。EE投与の培養肝細胞からの総コレステロール,コレステロールエステル,トリグリセライドの分泌には変化がみられなかった。肝ミクロゾーム分画のHMGCoAreductase活性を測定すると、EE投与によりHMGCoAreductase活性は低下していた。 このことにより、血清脂質の低下は肝へのレセプターを介しての取り込みの増大と考えられ、このような条件下では肝でのコレステロール合成が抑制されることが明らかとなった。 62年度は、超遠心機を用いLDL分画を採取し、【^(14)C】-sucroseをラベルした方法によるレセプターアッセイを確立して、リポ蛋白の肝への取り込みをくわしく検討する予定である。また、培養肝細胞を用いたリポ蛋白代謝の実験系を用い、脂肪酸とくに飽和脂肪酸(パルミチン酸),多価不飽和脂肪酸(リノール酸)の肝におけるリポ蛋白,胆汁酸代謝について検討する予定である。
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