フッ化物洗口法(0.05%NaF溶液、1日1回法)を実施している小学学童477名を対象に、永久歯小窩裂溝において新しく発生したC_0、及びC_1を追跡観察し、これらの齲蝕進行速度を検討した。齲蝕の診断方法は視診型とし、診査期間は原則として6ヵ月間隔で、各被検者は同一検査者が一貫して担当した。初めC_0であった症例の観察において、C_1以上進行例の割合は24ヵ月後51.1%であり、一方、健全の診断に戻った症例が6ヵ月経過以降のいずれにおいても約15%見られた。また、C_3に進行した例はこの期間で1例も見られなかった。また、初めC_1であった症例の観察において、C_2以上進行例の占める割合は24ヵ月後59.3%であり、C_3の発生が12ヵ月後にただ1例みられた。齲蝕が発見された12ヵ月後の進行率、現状維持率、戻った率を比較し、齲蝕発生時の学年により大きな差異を認めた。進行率は1年生群で特に大きく、高学年群ほど小さいが、逆に現状維持率や戻った率は高学年で大きく、これらの傾向はC_0、C_1とも同様に認められた。C_1の場合で、4年生、5年生群では進行率と戻った率が約20%の同程度となっていた。また、これら初期齲蝕の累積進行率を求め進行率の経時的推移について検討したところ、同様に齲蝕発生時の学年による特徴が認められた。特に1年生群の進行率は観察経過につれ急激な勾配で増加していたが、高学年群では緩い増加勾配となっていた。以上の結果をもとに、齲蝕予防管理においてフッ化物洗口法の恩恵を生かし、不要な充填を避けるための具体的な方法を検討した。そして、C_1が発見された児童が1〜3年生の低学年であれば即時の充填処置を行うこと、またこれが4年生以上であったならば次の検診でC_2が発見されるまで予防的経過観察を行う方が、より合理的な方法であると考えられた。今後、フッ素洗口を行っていない者の齲蝕進行率や、個体の齲蝕活動性との関連性について検討する予定である。
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